2026年7月09日

正しく知る、あなたの「心臓のバロメーター」
「病院で測ると高いけれど、家では普通だよ」 「具合が悪い時だけ測ればいいのかな?」
診察室で、患者さんからよく伺う言葉です。病院に来ると緊張して血圧が上がってしまう現象は「白衣高血圧」と呼ばれ、決して珍しいことではありません。
実は、診察室で測る一度きりの血圧よりも、リラックスしたご自宅での継続的なデータこそが、あなたの心臓と血管の状態を正確に把握するための、最も確かな「指標」になります。今回は、無理なく続けられる家庭血圧の測り方をお話しします。
1. 血圧計、どれを選べばいい?
結論から言うと、「上腕式(腕に巻くタイプ)」が最も推奨されます。
手首式と上腕式の違い: 手首は心臓より低い位置になりやすく、また血管が細いため、測定値が不安定になりがちです。
大切なのは「継続」: とはいえ、既に手首式をお持ちであれば、まずはそれで構いません。「毎日、いつも同じ血圧計で測り続けること」。その変化の傾向(トレンド)を知ることが、診断には何より重要です。
2. 理想的なタイミングは「朝」と「晩」
枕元に血圧計を置いておき、以下の「1日2回」を習慣にするのが最もリーズナブルで正確です。ただし、血圧を測ることが重荷と思われる方は毎日2回測定にこだわる必要はありません。ご自身の出来る範囲、1日1回になったり時には忘れる日があっても構いません。少しでも情報を頂けると私達には大変参考になります。
朝:起床後1時間以内 (トイレを済ませた後、朝食や内服の前に、1〜2分座って落ち着いてから)
晩:寝る直前 (座って1〜2分安静にした後に)
【ここがポイント!】
「頭が痛い」「フラフラする」といった具合が悪い時だけの計測は、実はあまり参考になりません。 体調が悪い時は血圧が上がるのが当たり前だからです。 私たちが知りたいのは、あなたの体がリラックスしている時の「素の血圧」です。
3. 正しく測るための3つの「コツ」
カフ(腕帯)は素肌か薄い服の上に: 厚手のセーターなどの上から巻くと、圧迫が正しく伝わりません。
腕の高さは「心臓」と同じに: 腕が低すぎると血圧は高く、高すぎると低く出てしまいます。テーブルなどを利用して高さを合わせましょう。
測るのは2回?: ガイドラインでは2回測ってその平均をとることが推奨されていますが、まずは「1日2回、継続すること」を最優先にしてください。
4. 家庭での血圧、どこを目指せばいい?
「自分の血圧はどれくらいを目指せばいいのだろう?」と思われるかもしれません。
最新のガイドライン(2025年改訂)では、年齢や持病に関わらず、目指すべき目標値が分かりやすく整理されました。診察室での目標は「130/80未満」ですが、お家でリラックスして測る「家庭血圧」は、それより少し低めの数値を目標にします。
家庭血圧のコントロール目標: 上 125 未満 / 下 75 未満
まずはご自身の数字がこの目安に対してどのあたりにあるか、確認してみてください。(※ご年齢や持病によって目標値が異なる場合がありますので、詳しくは診察室でご相談ください)
おわりに
血圧手帳に書かれた数字は、決してあなたを評価する「通信簿」ではありません。
「昨日は少し塩分を摂りすぎたから130を超えてしまったな」「最近はしっかり125未満に落ち着いているな」と、ご自身の生活を振り返るためのツールです。そして私たち医師にとっては、あなたに最適なお薬の種類や量を調整するための、何より大切な手がかりになります。
毎日完璧に測れなくても大丈夫です。測り忘れた日が続いてしまって手帳は空白だらけであっても構いません。そのまま診察室にお持ちください。
「最近、ちょっと忙しくて測れていなくて……」
そんな会話からでも、診療は前に進められます。まずは、ご自身のできる範囲で血圧計のスタートボタンを押すことから。あなたの「素の血圧」を、次回の診察でぜひ教えてください。
